子どものプレイセラピスト(1)

 私は2007年、子どものプレイセラピーをするための開業心理相談室を開室いたしました。「プレイセラピーをシンプルな形で提供したい」という思いから、ワンマン形式、すなわち他のカウンセラーも受付もいない相談室でした。当時は、気の合う仲間と寄り合い形式で開業することが多かったのではないかと思います。鈴木龍先生が「鈴木龍分析オフィス(現・鈴木龍クリニック)」をワンマン形式で開室されていたと思います。

 当時若気のいたりもあったと思いますが、私は「子どものためのプレイセラピーを開業相談室でかつワンマン形式で」行いたいと考えており、それを実行いたしました。これはちょっと考えればわかるのですが、かなり尖った設定です。普通にカウンセリングルームを立ち上げるのも大変なことだと思います。それをプレイセラピー・開業・ワンマンという条件を加えての開店ですから、ご近所のカウンセリングルームに比べれば、かなりケース数は少ないです。後々わかることなのですが、このスタイルは悪くありませんでした。ケースについては触れるつもりがありませんので詳述しませんが、本当にシンプルに色々なことが見えてきました。広い意味でのアセスメントになると思いますが、「このケースを自分ができる(でききる)かどうか?」ということを見立てることが第一義となりました。ゆえに私流のアセスメントは、ケースの細やかな見立ての前に、「自分ができるかどうか」が何よりも優先されました。その次に「この子(この人)のお役に立てるかどうか」という順にアセスメントをしていくようになりました(これらのことはまたいつか書きます)。

 さて今回なぜこのような記事を書こうと思ったのかといいますと、「この令和4年8月をもって、子どものプレイセラピーの新規ケースを取らない」という心境になったからです。決してカウンセラーやセラピストをやめるという意味ではありません。あくまで相談室として、子どものプレイセラピーを自然に閉じていく、ということになります。コロナ禍もあり、事実上、子どものプレイセラピーの新規ケースは取っていませんでした。ただそのことが原因ではありません。大人のセラピーもそうだと思いますが、セラピーは一度始めると、数年、場合よって10数年続く場合もあります。その意味で、子どものプレイセラピーをこれから5年6年、場合により10年やっていく覚悟を持つ、ということが私にとって難しくなったということが理由です。決して病気になったということではありません。純粋に歳をとってきた、ということです。これから新規の子どものプレイセラピーをするとなると、そのプレイセラピーをワークスルーする(やり切る)まで自分が持ち堪えられるかわからない、と思うようになったのです。

 それからもう一つ、大きな問題があります。これは薄々わかっていたのですが、子どもたちにチューンすることができにくくなった、ということです。俗に言えば「(子どもたちから見れば)イケテナイ」ということです。そんなことはないだろう、と言われる方もおられると思います。セラピストは年齢も性別も関係ないとご主張される方もいるでしょう。それは全く否定しませんし、私もそう思う所もあります。しかし、「イケテナイ」はここ最近私のテーマでした。プレイセラピーは言語によるセラピー以上に、セラピストの心の中に自生することばを手繰り寄せ、解釈に使っていく必要があると私は思っています。今の私はそれが難しくなってきたのです。この「イケテナイ」悩みは、臨床仲間に聞いてもらっていました[H先生(男性)、M先生(女性)ありがとう]。そしてこの令和4年8月に、私は子どものプレイセラピストとしてはケリをつけた、終いをつけたということです。何も悲観的になることではなく、子どもの相談やカウンセリングはこれまで通り続けていきますので、廃業ということではありません。この心境は綴っておきたく、記事にいたしました。長くなりました、続きはまた。

 ここまで読んでくださった方ありがとうございます。